腋窩神経由来の肩の痛み

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今回は先日出会った肩峰下の痛みについて書いていきます✍️

ご相談いただいた方にお話を聞くと

「バンザイすると肩が痛いんです😭」

とお話しされます。

痛みの場所を見ると肩峰下の三角筋の辺りが痛むようです。

姿勢を見ると患側の肩が前に入り胸の硬さも見られます。

痛みのある場所の圧痛を見ると、局所的に強く圧痛はなく

しかし、痛みは肩峰下の三角筋周囲に感じるようでした。

この症例、結論から述べると

腋窩神経の絞扼を解くことで解消しました。

今回はそんな腋窩神経の痛みを主に肩峰下の痛みについて書いていきます✍️

肩峰下の痛み

では、まず肩峰下の痛みについて考えられるものをいくつか挙げていきます。

棘上筋の痛み

滑液包の痛み

三角筋の痛み

腋窩神経の痛み

他にも骨折等も考えられますが、今回は省きます。

棘上筋

棘上筋は肩峰と上腕骨との間に挟まれ傷つくことがあり、ひどい場合には腱板損傷や腱板断裂も考えられます。

テストとしてはドロップアームテストやペインフルアークも特徴です。

肩峰下滑液包炎

肩峰下滑液包は肩峰と上腕骨、棘上筋の間にある滑液包で知覚神経がたくさんあるので炎症が起きると強く痛みます。

テストはダウバーンテストが有効です。

三角筋

三角筋の損傷だった場合は、圧痛や自発痛があると考えられます。

腋窩神経

そして腋窩神経の痛みについて、

腋窩神経はクアドリラテラルスペース(Quadrilateral Space 以下QLS)での絞扼が多く見られます。

今回のケースもこの場所での絞扼が見られました。

腋窩神経

腋窩神経走行

腋窩神経の走行は腕神経叢から出て、肋鎖間隙、小胸筋下を通りQLSを通過して上腕部に走行します。

絞扼部位としては、胸郭出口やQLSでの絞扼が多く見られます。

そのQuadrilateral Spaceとは以下画像にある

小円筋、大円筋、三頭筋長頭、上腕骨で構成された腋窩神経が通過する隙間のことです。

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用

何らかの原因でこの場所で腋窩神経の絞扼があると肩峰下で三角筋の辺りに不明瞭な痛みが出現します。

ここが痛い!

というはっきりとした痛みではなく

この辺りが痛いと言ったように

場所がはっきりわからないけど、ここが痛いんだ

と言った具合の痛みが見られます。



周囲のアライメントを整える

では、その絞扼部位を緩めれば治るのかというと

一概にそうとは言えません。

肩の動きでは肩甲骨や胸郭などのアライメントが関与していて

このアライメント崩れが肩の障害に強く影響します。

肩甲骨

肩甲骨前傾位では、肩甲骨の動きが制限されるため肩関節外転制限が見られる。

肩関節外転時、肩甲骨の動きが制限された状態で肩を動かすことにより動的に腋窩神経が絞扼を受け炎症が出る可能性がある。

腋窩神経の炎症が出ると、支配筋である三角筋や小円筋の機能的短縮が起きる。

短縮が起きることでQLSの狭小、三角筋の緊張により上腕骨の上方変位が起きる。

肩甲骨前傾位、外転位で棘下筋の緊張が強くなり上腕骨の前方変位が起きる可能性もあり

肩甲骨のマルアライメントでさまざまな機能障害が起き、肩周囲の障害に繋がります。

胸郭

胸郭の制限も肩の障害にとって重要な部位である

胸郭屈曲位にあると肩甲骨も前傾しやすく、相対的に肩関節は軽度屈曲位となる

その状態では胸部や頸部の緊張が強くなり動きの制限となる。

また棘下筋の緊張も出やすく、硬さが強くなると上腕骨の前方変位への繋がる

胸郭の制限の原因としては胸郭下口(みぞおち)や胸部の硬さなどがあり

テレワークが普及している現在

こういった方が多くなった印象もあります。

肩甲骨前傾によって起こること

肩峰下でのインピンジメント

肩甲骨の動きの制限による関節唇インピンジメントや腋窩神経絞扼

棘下筋の緊張による上腕骨の前方変位

三角筋の緊張による上腕骨上方変位

の可能性があります。

他にもいろいろありますが、今回はここまでにします。

以上のように絞扼部位だけでなく、周囲のアライメントの崩れも患部にストレスをかけているケースもあるため

実際の治療では周囲のアライメントを整えることも必要になります!

今回の症例に対するアプローチ

では、今回の症例のアプローチについて

今回の症例では、肩周囲の各種テストは陰性で痛みの場所は不明瞭ながら肩峰下で三角筋周囲に痛みがある。

肩甲骨も前傾位で、肩外転時に痛みが出るようです。

他動的に肩を外転させると小円筋や大円筋の辺りに制限を感じました。

そこで、腋窩神経の絞扼を考え

胸郭の可動域を取り戻し、肩甲骨前傾を改善させ、肩甲骨の動きを取り戻し

緊張が強くなり腋窩神経を絞扼すると考えられる大円筋や小円筋、三頭筋を緩めることで肩の可動域を広げました。

ここまで手を入れて

先程痛みのあった肩の外転の動きを確認してもらうと、

痛みなく動かせるようでした。

どうやら、今回は腋窩神経の絞扼で間違いなかったようです。

最後に胸郭や肩甲骨の動きを取り戻すエクササイズを伝えて

今回は施術を終えました。

患者様も笑顔で帰られて、一件落着🎶

繰り返さないようにエクササイズをやりましょうね🎶

最後に

今回の症例のように肩峰下の痛みの中には

肩峰下に問題はなく、肩の後部にあるQLSでの腋窩神経の絞扼により肩峰下に痛みが出るケースがあります。

肩峰下の痛みは、棘上筋の炎症や肩峰下滑液包炎なども考えられます。

様々なテストで、何が痛みを引き起こしているのかを確認してアプローチしましょう。

また、毎度のことながら

炎症が強い場合には適応外となりますので、炎症所見はしっかりと確認してアプローチしましょう!!

今回は以上です。患者様のために頑張る治療家の参考になれば幸いです。

この記事が若手治療家・トレーナー、その先の患者様の役に立ちますように。

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