先日の治療のお話です。
体操選手からのご相談で
跳馬(跳び箱)の助走で、ロイター板に向かう最後の踏切で上腰部や左大腿筋膜張筋周囲から大腿外側にかけて痛みが出る
と相談がありました。
体を反る動きや
反った状態で左に側屈しても腰に痛みが出ていて、反った状態での左側屈では、左大腿筋膜張筋から大腿外側にも痛みが出ます
ちなみにロイター板への最後の踏切では、左股関節が強く伸展します。
この選手、幼少期から競技をトップレベルで行なっていて
かなり無理をしてきたのでしょう。
1.2番腰椎圧迫骨折の変形がありました。(椎体の前部が潰れるように変形している)
ここが原因とも考えられますが
同じ状態でも
これまで痛みなく動けていたので、腰椎だけが原因ではないと考えられます。
結論から述べると
症状が改善したきっかけは、股関節内転・内旋筋の反応を取り戻したことでした。
今回はそんな話を書いていきます✍️
大腿外側の痛み
痛みの出ている大腿筋膜張筋周囲と大腿外側の痛みの原因を考えます。
この部分の痛みの原因として
大腿筋膜張筋や腸脛靭帯、外側広筋など筋肉の障害
腸骨下腹神経や外側大腿皮神経の障害が考えられます。
腸骨下腹神経
外側大腿皮神経
両神経の支配領域はこちら
また両神経に関する治療について過去の記事にも書いています。
そして今回疑ったのは、後者
神経の障害を疑い治療をしました。
治療について
体の状態を見ると
外側大腿皮神経絞扼の好発部位である↓◯部分に圧痛が見られました。
そして患側股関節外旋位で
両側ですが患側で特に筋膜張筋や腸脛靭帯の緊張が強く出ていました。
左側屈時には上位腰椎がやや後弯し胸郭の伸展制限も見られました。
アライメントや動きを確認し
大腿外側の症状は、外側大腿皮神経絞扼による症状で
股関節外旋位で仙腸関節、骨盤の動きの制限により、腸骨下腹神経にストレスがかかり、股関節外側の症状
そして、胸郭、骨盤の動きの悪さやそれに伴う腰部の緊張により腰部に痛みが出るのではと推察しました。
アプローチとして
股関節外旋筋を緩めて仙腸関節の動きを取り戻し、外側大腿皮神経の絞扼を解くこと
さらに胸郭伸展制限を解き腰部の緊張を緩めます。
複数回治療をしているのですが、初めのうちは治療後も大腿筋膜張筋周囲の症状が少し残っていたのですが、時間の経過と共に、治療後には症状が出なくなりました。
おそらく、神経の損傷があり、それが回復してきたのだと考えます。
ランジの動作修正
治療を進めていき、私生活では気に全くならなくなりました。
しかし、それでも練習をしていると以前より症状は軽いものの
股関節から大腿部に痛みが出てきてしまうというのです。
症状が出るのは、跳馬の踏切のみになりました。
走る中で股関節が強く伸展されると症状が出るようです。
何か見落としがないか考えた時に
股関節伸展時に痛む
患側股関節が外旋位
ここが気になりました。
治療することで外側大腿皮神経の絞扼は解かれ
その後、安静時での症状はなくなります。
しかし、練習中大きく股関節が伸展される時
股関節外旋位で伸展を強く起こすことで動的に外側大腿皮神経の神経絞扼が起きるのではと考えました。
ものは試しです
治療的診断といこうじゃありませんか!
股関節伸展運動のときの股関外旋を修正するために
今回はランジを取り入れました。
ただのランジではなくチューブを外側から膝に引っ掛け、そのチューブの張力に
股関節内転内旋の力でチューブに抗いながらランジを行います。
こうすることで、股関節伸展時に内転内旋筋の反応を出し股関節伸展運動を修正します。
このトレーニングを続けてもらいました。
数日後、また治療に伺うとその選手が来てくれて
股関節の痛みなくなりました!
と報告してくれました。
どうやら動作修正の効果がしっかり出てくれたようです!
これでまた、気持ち良く練習してくれると思います!
ベッド上の身体だけでなく「動き」を見る
私たち治療家は、患者様にベッド上で臥位になってもらい治療をすることが多いと思います。
ベッド上で治療をすることで、治療後には症状が改善するものの
しばらくしてまた症状が繰り返しすことは良くある話だと思います。
そこで考えなくてはいけないのは、症状が出るきっかけです。
いつも同じ動作をする時に症状が出る方は、その動作自体に問題があることが多いです。
ベッド上での治療だけでなく
症状が繰り返されないよう、
患者様の「動き」を考えて
症状に繋がる動きの狂いがあれば
その動きを修正するエクササイズを提案することも
効果的な治療の一手となります。
ベッド上の治療だけでなく「動きの修正」という治療を取り入れて
より多くの方に喜んでもらいたいですね!!
今回は以上です。
参考になれば幸いです。
この記事が若手治療家・トレーナー、その先の患者様の役に立ちますように。
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