手首を捻ると手関節尺側が痛い-TFCC損傷?-

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今回は先日出会った手首の痛みについて書いていきます✍️

今回の主訴は手首を捻ると手首の小指側から尺骨沿いに5cmくらいの幅で痛みが出るとのことでした。

今回の相談はアスリートからの相談なのですが

ドアノブを捻ると痛い

フライパンを握ると痛い

雑巾を絞ると痛い

など、一般の方でもよく見られる手首の症状です。

実は私自身も体操現役時代は、手首尺側の痛みに悩まされていました。

病院に行くと決まって

尺骨が少し長いから痛むんだ

と言われ、どうにもできない痛みにずっと悩んでいたので、その辛さがすごくわかります。

治療家駆け出し時代も、たまに手首が痛くなり困ったこともありますが

今はもうほぼ痛くなることはありません。

今考えると、あれくらいの骨の長さはそんなに問題ないじゃないか!と思っています。

だって今痛くならないもん。笑

私自身悩んだ痛みなので

手首の治療については多くの若手治療家に伝えていきたいと思っています。

当然全ての手首の痛みを治せるかといえば、そうではありません。

ですが、正しいアライメントに整えることで痛みがなくなるケースも多くあります。

ですので、今回は手首の痛みで悩んでいる方や

手首の治療で悩んでいる治療家に向けて

先日出会った手首の痛みを例にに書いていきます。

 

ちょっと脱線しましたが、今回は手首の小指側の痛みということで

頭によぎるのは

TFCC損傷だと思います。

まず、TFCCの損傷とはどんなものかについてざっくり書いていきます。

このブログでは、私の治療経験をメインにしたいので

TFCC損傷についてもっと詳しく知りたい人は、書籍や他サイト等で調べてください。

TFCC損傷とは

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用

TFCC損傷とは

手首の尺側で手根骨と尺骨の間にある三角繊維軟骨複合体のことで、三角繊維軟骨や橈尺靭帯などの総称

手首の尺側の安定性と支持性のために必要なものになります。

 

このTFCCに損傷があるとドアノブを捻るような手首を捻る動きや

手をついた時に手関節の尺側に痛みが出ます。

では、TFCCはどんな時に損傷するのかというと

転んだ時など手をついた時に手関節の尺側に強い負荷がかかったり

スポーツや家事などで、手首の尺側に何度も繰り返し負荷がかかることで損傷します。

今回のご相談(主訴)

TFCCについて、ざっくり理解したところで今回のご相談について書いていきます。

今回のご相談は、手首を回内させると手首の小指側から骨沿いに痛みが出るとのことでした。

手をついた時の痛みは、

それほど強くはないが、少し違和感を感じる程度でした。

んーTFCCもあるかな?と思い

手関節を橈屈させて尺骨と手根骨の間の圧痛をみます。

手関節を橈屈させて、TFCCをより触れやすくするのですが、この部位圧痛は少し違和感がある程度でした。

さらに今度は尺屈させ、その状態で尺骨方向に軸圧をかけ少しの幅で回内外させます。

手部を尺骨に押し当てグリグリする感じですね。

TFCCの損傷がある場合、こういった軸圧ストレスをかけると痛みが誘発されます。

今回のケースでは、こちらも痛みはありませんでした。

どうやらTFCCの損傷はなさそうです。

では何が痛みの原因なのか?

それを知るためにアライメントをよく見てみましょう。

この患者様は

前腕屈筋郡の硬さが強く

手根骨が屈側に引き込まれるように落ち込んでいました。

手関節の痛みを訴える方では、こういったアライメントになっている方が多いです。

前腕屈筋郡の中でも、

橈側手根屈筋・尺側手根屈筋の硬さがあるとこの状態になりやすく

橈側手根屈筋の停止は第2.3中手骨底

尺側手根屈筋の停止は豆状骨、有鉤骨、第5中手骨底

どちらも中手骨や手根骨の遠位に付着します。

手関節を背屈する時には

凹凸の法則で

手根骨は掌側にスライドしながら転がるように背屈します。

橈側・尺側手根屈筋の硬さが強いと手根骨の掌側への動きを妨げ、背屈の制限となります。

また母指球や虫様筋の硬さも同時に出ているため手根アーチも強くなり、さらに手関節の動きに制限をかけて関節の負荷を大きくします。

ちなみに凹凸の法則とは

関節では、対する2つの骨があり凹の形状の骨と凸の形状の骨が向き合って関節となります。

凹面に対して凸面の骨が動く際には骨運動の方向と滑り方向は反対になり。

凸面に対して凹面の骨が動く際には骨運動の方向と滑り方向は同じになります。

手関節の場合には橈骨が凹で手根骨側が凸の動きをします。

どの関節もこの法則があり、関節の調整をしたりモビライゼーションを行う際には、この法則を理解して行うことが必須だと思います。

AKA関節運動学的アプローチー博田法第2版より引用
AKA関節運動学的アプローチー博田法第2版より引用

凹凸の法則など詳しくはこちらに書いてあります。

さらに、回内外の動きにストレスをかける要因として、肘・橈尺関節が挙げられます。

実際には肩からアプローチしますが、詳しくはこちらをご覧ください

手首の治療に、なぜ首へのアプローチが必要なのか

肘にフォーカスを当てると、回内筋の硬さが出ていて、前腕が回内位にあり、肘の伸展制限も見られました。

そのため、伸展制限となっている二頭筋、上腕筋から回内筋を緩めて肘の伸展、回外制限を解きました。

肘、橈尺関節の動きを取り戻し再度痛みの確認をしてもらうと

手をついた時の違和感は無くなりましたが、まだ回内した時の尺骨に反った痛みが残ります。

そこで再度、動きの確認をすると、尺側手根屈筋腱の硬さが残っていました。

ここで、尺側手根屈筋の腱にアプローチをかけて緊張を緩めました。

こちらは炎症が少しありそうです。

そして再度確認してもらうと、回内の動きも痛みなく動かせるようになりました。

どうやら、今回のケースはTFCCの損傷はなく、橈尺関節の動きの悪さ・尺側手根屈筋腱の硬さと炎症が悪さをしていたものだと考えられます。

まだ尺側手根屈筋腱の炎症は残るため炎症を引かせるアプローチを伝えて施術を終えました。

まとめ

今回のケースでは、手首の小指側が痛いということでTFCC損傷も視野に入ります。

TFCC部の圧痛は強くなく

手関節の尺側に軸圧をかけても痛みは誘発されなかったことからTFCC損傷の可能性は低いと考えました。

他の原因を考えた時に見えてきたのが、手根骨の掌側への落ち込みと肘の伸展制限、橈尺関節の回内位にあるアライメント変化が見られました。

前腕回内位にあると橈尺関節関節の位置関係が悪くなり、尺側手根屈筋や伸筋にストレスがかかっているケースが多く見られます。

肘の伸展制限と前腕回内位は、どちらも手をついた時や、回内外の動作で手関節にストレスを強めることが考えられるため

その制限を解き、痛みの改善を狙いました。

もう一つ痛みの原因として、尺側手根屈筋腱の炎症が見られました。

おそらく今回の痛みの最大の原因は、この炎症と考えられますが

ここに炎症が起きる原因となったのは、上述したアライメントの悪さだと考えられます。

そして手関節、肘のアライメントを整えて確認きてもらうと痛みなく動けるようになるため

やはりTFCCの損傷はなかったと考えられます。

このようにアプローチをして、反応を見ることにより原因を突き止めることを治療的診断と言います。

私たちは画像診断はできませんが

患者様の体の状態をしっかりとみて、徒手でのテストや痛みの原因を推測してアプローチすることで、患者様の痛みの原因を探ることができます。

なかなか治らない手首の痛みも、このようにアライメントを確認してアプローチすることで

痛みの改善に繋がるケースも多くあります。

しっかりと患者様の状態を把握して、手首の痛みで悩む患者様を一人でも多く救っていきましょう😊

※最後に

上述しましたが、どんな治療家も全ての手関節の痛みを治せるわけではありません。

炎症が強いときは炎症を引かせる処置や時には病院での診察が必要になります。

患者様のためにしっかりと見極めてアプローチしましょう。

今回は以上です。

この記事が若手治療家やトレーナー、その先の患者様の役に立ちますように。



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