肩の治療における胸郭の重要性ー腱板損傷・肩鎖関節炎ー

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「肩が痛い」という患者様に対して、肩関節周囲のみにアプローチしていませんか?

肩関節周囲へのアプローチでその場では動きや痛みが改善することもあると思います。

しかし、それだけではすぐに症状が戻ったり、痛みが強くなるケースもあります。

肩関節以外に何が必要なのか?

それは「胸郭」です。

胸郭を置いてけぼりにして肩関節にアプローチしている方も多いと思います。

今回は肩関節疾患への治療における胸郭の重要性についてお話していきます。

肩だけではダメ

肩の動きには胸郭が連動して動きます。

胸郭ってそんなに影響あるの?と思う方は試しに、近くの人に胸郭のを抑えてもらい、バンザイしてみてください。

どうですか?バンザイができなくなると思います。

肩の動きには胸郭の可動性が大きく影響するんです。

腱板損傷や肩鎖関節損傷など肩の痛みを訴える患者様で胸郭の制限がある場合

胸郭の動きを改善をせずに肩関節の治療を行うと

一時的には動きが良くなったり、痛みが改善することもありますが

治りが遅かったり、動かしているうちに痛みが強くなるケースもあります。

なぜなら、連動して動くはずの胸郭の動きは改善されないまま、肩関節の動きだけ良くなるので、動きの中で肩関節が動き過ぎてしまい、結果的に肩関節にストレスが大きくなると考えられます。

特にアスリートなど運動をしている人では、肩関節が動きすぎることで、さらに腱板や肩鎖関節などの炎症を強くしてしまうもあります。

ここで必要なのが胸郭の可動域を改善させることです。

また、いわゆる五十肩など肩関節周囲炎でも同じことが起こると思っています。

治療家として動かない肩を見つけたら、可動域を広げたくなると思います。

しかし胸郭の動きを改善せず肩へのアプローチをしてしまうと、症状を悪化させてしまうことがあります。

私見ですが、特に炎症期には肩の可動域を広げず、安静とし

胸郭へアプローチすることも大事だと思っています。

胸郭の動きって?

胸郭の動きはどんな動きでしょうか。

胸郭の動きには

ポンプハンドルアクション

バケツハンドルアクション

という動きがあります。

ポンプハンドルアクション

カパンジー機能解剖学 III 脊椎・体幹・頭部 原著第7版より引用

ポンプハンドルアクションは上位胸郭の動きのことで

名前の通りポンプのハンドルのような動き方をします。

バケツハンドルアクション

カパンジー機能解剖学 III 脊椎・体幹・頭部 原著第7版より引用

バケツハンドルアクションは下位胸郭の動きのことで

こちらも名前の通りバケツの取手部分の動きに似た動き方をします。

こういった胸郭の動きに制限があると、胸郭が肩の動きに連動できずに肩の障害に繋がる可能性が考えられます。

胸郭に関わる筋

胸郭の動きに関連する筋をご紹介します。

呼吸筋

呼吸では主に横隔膜や肋間筋が関与します。さらに

吸気には

僧帽筋、大胸筋、肩甲挙筋、斜角筋、胸鎖乳突筋

呼気では

内肋間筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋

以上が主に呼吸に関連する筋です。

その他に起立筋、多裂筋、腰方形筋、腸腰筋なども胸郭に関連します。

筋膜の繋がりを考える

内転筋

大腿筋膜張筋

後脛骨筋

などの筋も胸郭に影響を及ぼすため、胸郭の動きを取り戻すために下肢へのアプローチが必要なケースも多くあります。

アナトミー・トレイン [Web動画付] 第3版: 徒手運動療法のための筋筋膜経線より引用

上位胸郭は鎖骨、胸鎖関節の動きに互いに影響があり

胸鎖乳突筋や僧帽筋、大胸筋上部繊維、三角筋、小胸筋など鎖骨の動きを制限しているものをリリースする必要もあります。

アプローチに関しては、患者様の状況により様々ですが

肩の治療の際に上述したような胸郭の動きに関連する部位を見て、胸郭の可動性を取り戻すことが

腱板損傷や肩鎖関節炎など肩の痛みを訴える方への有効なアプローチになります。

実際に

胸郭が屈曲位で伸展制限がある状態だと肩を屈曲した際に肩峰下でインピンジメントが起きやすく腱板損傷に繋がりやすいです。また胸郭の可動性が低下している状態だと肩甲帯動きの制限も起きやすく肩鎖関節へのストレスも大きくなります。

そのため腱板損傷や肩鎖関節炎の患者様の治療で胸郭の可動性を取り戻すだけでも症状が緩和し、

さらに肩関節周囲にアプローチすることでより症状が改善するケースがあります。

まとめ

今回は肩の治療における胸郭の重要性についてお話しました。

肩が痛いと訴える患者様に対して、肩周囲の状態を見て、肩関節のみにアプローチしている治療家は意外と多いと思います。

もし胸郭の可動制限がある場合、胸郭を置いてけぼりにして肩の可動域を広げていくと

動きの中で肩関節が動き過ぎてしまい

腱板炎や肩鎖関節炎、肩関節周囲炎などの損傷、炎症を悪化させてしまう可能性があります。

そこで大切なのが、胸郭の可動性を取り戻すこと

なぜなら肩関節の動きは胸郭と連動して動くため。

状況によっては、肩の可動域を広げず、胸郭の可動性を取り戻すことに注力した方が良い時期もあると考えています。

胸郭の動きの代表として

ポンプハンドルアクションやバケツハンドルアクションが挙げられます。

こういった胸郭の動きに制限がある場合、肩へのストレスが大きくなります。

胸郭に関連する部位にアプローチして

胸郭の可動域を広げることも肩関節周囲の痛みを訴える患者様の治療では有効なアプローチになります。

今回は以上です。

参考になれば幸いです。

この記事が若手治療家やトレーナー、患者様の役に立ちますように。


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