こんにちは!
今日は先日出会った坐骨神経の痛みについて書いていこうと思います。
体操競技をしている女子選手で症状は
前屈や膝伸展位で股関節を屈曲すると坐骨結節と大転子の間↓に痛みが出るとのことでした。
体操選手でこの症状では、練習にかなり支障がでます。
この選手は2週間後に大会を控えており、このままじゃ練習ができないと悩んでいました。
坐骨神経について
まず、坐骨神経の走行についておさらいしていこうと思います。
L4~S3から起こる神経叢で総腓骨神経(L4~S2)と脛骨神経(L4~S3)が同一の結合組織に包まれて、外見上、太い神経になったものである。
梨状筋下口を出たのち坐骨結節と大転子の中間付近を通って大腿後面に達するまで両神経が付着し合った太い神経のままである。
膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経が分かれて、さらに硬いと足に分布する。
総腓骨神経
大腿後面では脛骨神経の外側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら大腿二頭筋短頭に枝を与える。その後膝窩上方で脛骨神経と分離して大腿二頭筋の停止腱に沿って腓骨頭の下方(腓骨頸)に達する。
紺神経は外側から腓骨頸を回り込んで下腿に入る際に次の2枝に分かれる。
下腿外側の被覆筋群に分布する浅腓骨神経と、下腿前面の伸筋群に向かう深腓骨神経である。浅腓骨神経は
長・短腓骨筋に枝を出した後、下腿の遠位部で皮神経となって皮下に出て、内側および中間足背皮神経として足背に分布す。深腓骨神経は長腓骨筋の起始の深層を素通りして伸筋群に達し、長趾屈筋と前脛骨筋の間を下行しながら長趾伸筋・長母指伸筋・前脛骨筋に枝を出す。皿部長母指伸筋腱および前脛骨動脈などとともに伸筋支帯の深層をくぐって足背に達し、短母趾伸筋および短指伸筋への枝を出す。その後細い皮神経となって母趾と第二指の間の皮膚に分布して感覚を担う。
脛骨神経
大腿後面では総腓骨神経の内側い位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら、半腱・半膜様筋および大腿二頭筋長頭に枝を送って支配する。その後、総腓骨神経と分離して膝窩動脈とともに膝窩中央を垂直に下行し、下腿後面に至る。
膝窩では下腿三頭筋・膝窩筋・足底筋に枝を送るほか、内側腓腹皮神経を出す。
内側腓腹皮神経は、総腓骨神経の枝と合流したあと腓腹神経となり、下腿の遠位部・踵部・足背の外側部の皮膚感覚を担う。脛骨神経の本幹はヒラメ筋腱弓の深層をくぐって、ヒラメ筋と下腿深層の屈筋群(長指・長母指屈筋および後脛骨筋)の間を通り、これら下腿深層の屈筋に枝を出す。さらに、脛骨神経は足首まで下行して、長趾屈筋・長母指屈筋・後脛骨筋・後脛骨動静脈とともに内果の後方を回って足底に向かう。
足底に入る直前、脛骨神経は内側・外側足底神経に分かれる。内側足底神経は、短指屈筋に枝を出すほか、母指球に向かい、母趾外転筋、短母趾屈筋および第1虫様筋に枝を与える。そのほか残りは足底内側部の皮神経となる。外側足底神経は、足底を小指球に向かって進み小指球および内側足底神経が支配しない中足筋・母趾内転筋に次々に枝を出して支配する、そのほか足底外側部の皮枝として浅枝を分枝する。
坐骨神経痛
坐骨神経の走行に沿って痛みを生じ、坐骨結節と大転子を結ぶ線の中点、膝窩、腓骨頭の下などに圧痛点がある。神経が伸展されると痛みが強くなり、背臥位で膝を伸ばしたまま下肢を持ち上げると神経に沿って強い痛みが生ずる。(ラセーグ徴候)また総腓骨神経は、腓骨頭を外側から回りこむ際に皮下の浅層を走るため圧迫や損傷を受けやすい。
参照:解剖学 医歯薬出版
坐骨神経痛には梨状筋?
上記坐骨神経の走行を見ると坐骨神経は梨状筋下口を通ります。
大学時代坐骨神経痛は梨状筋を緩めろ!と誰かから聞き
鍼灸学生1年生ころまで坐骨神経痛には梨状筋を緩めるのが良い!となぜだか信じっていました。
学生時代周りを見ると同じように梨状筋だと言う人が何人もいたように思います。
若手治療家の中にもそう言う方を見かけます。
はたして坐骨神経痛には梨状筋なのでしょうか。
上記で坐骨神経は梨状筋下口を通ると書きましたが、梨状筋を貫く人もいたり走行には個人差があります。
個人差はあるものの梨状筋が深く関わりそうだというこことは頷けますね。ましてや梨状筋を貫いている方は、梨状筋の状態がかなり影響しそうです。
ということはやはり、梨状筋を緩めるのが最も効果的なのか!!?
と言えば
やはりそうは言い切れません。
坐骨神経痛(坐骨神経に沿った痛み)は梨状筋だけでなく神経根での障害でも症状が出ると考えられますし、大腿二頭筋の影響も考えられます。
(評価には知覚障害や運動障害、反射障害の評価が必要)
症状の部位によってはもっと下位の影響など、その人によってさまざまですので
やはり一概に坐骨神経痛には梨状筋だ!とは言えません。
今回の症例
さて、今回の症例はというと
知覚も運動障害もなく膝伸展位の股関節屈曲や前屈で痛みがあり、それ以外では下肢への症状は出ません。
他には腰部の伸展と右側屈で仙腸関節周囲の痛みがでます。
右股関節外転の制限も見られました。
状態としては、骨盤前傾位で片脚立ちをすると
健側と比べて患側の方がグラグラとしてバランスが取りづらい!
というところが見えてきました。
ここから考えるのは、
臀筋の反応が落ちている。つまり臀筋の支えが弱い状態にあり、股関節屈曲内転位に収まりやすい状態にあるのではないかということ。
立っている時に股関節屈曲内転位にあると
相対的に骨盤は前傾位にある。
その状態にあるとハムストリングスは伸長固定
梨状筋や外旋筋も伸長位になります。
この状態では立っているだけでもハムや外旋筋にストレスがかかりますし、ましてや体操の着地動作などでのストレスはかなり大きいと考えられます。
梨状筋やハムの緊張も出て、骨盤前傾もあるため坐骨神経へのストレスも大きくなりますね。
なので、まず対処するべきは
ストレスのかかっているハムや梨状筋含め外旋筋ではなく
骨盤前傾や股関節屈曲内転位への対処です。
さて、やるべきことが決まったらアプローチ!
まず内転筋や股関節屈筋へのアプローチをしましたが
内転筋の硬さがかなり強く出ていました。
これでは骨盤の動きも制限され、臀筋も働きづらい!
丁寧に内転筋と股関節屈筋を緩めて腰方形筋にアプローチすると仙腸関節の動きを取り戻せました。
そこから、ストレスがかかり疲労困憊となっているハムや外旋筋を緩めて、足関節まで下肢を調整します。
ここで、臥位ではSLRをしても症状は消失します!
が、このままではいけません。
臀筋の反応を取り戻さないと何度でも施術前の状態に戻ってしまうので
ヒップリフトとヒップアブダクション
片脚立ちのトレーニングをしてもらい
臀筋群の反応を取り戻します。
ここまでバランスを整えて確認してもらいます。
すると、前屈も股関節屈曲も痛みなく動けるようでした!
まとめ
坐骨神経痛は梨状筋を緩めろ!という若手や新人さん。たまに見かけますが
しっかり評価をして、その症状はどこが原因なのか見極める必要があります。
例え、今回の選手のように梨状筋やハムストリングスが原因と考えられる症状でも、単純にその筋を緩めるのではなく
その筋にストレスをかけている原因となるアライメントを見極めて解消する必要があります。
それは徒手や鍼灸などによるパッシブなアプローチだけでなく
筋バランスを考えて弱い部分の反応を取り戻すことも症状の改善には必要となります!
こういった考え方は、今回のような症例だけでなくどんな症例にでも言えることだと思います。
今回はあくまで一例ですが
若手治療家やその先の患者様の役に立ちますように。
今回は以上です!
じゃあ、またねー!
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