バレエダンサーの鼠径部痛

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今回は先日治療したバレエダンサーの鼠径部痛に対する治療について書いていきます。

 

鼠径部の痛みは色々な原因があり、若手治療家の中には鼠径部や股関節の治療で悩む方も多いと思います。

・股関節って複雑でどう治療したらいいのかわからない

・鼠径部痛って原因が不明で難しい

・腸腰筋腱の痛みが治せない

などなど

 

そんな悩みを持つ方の気づきのひとつになるよう

鼠径部痛の治療の一例をご紹介します。

 

症状について

バレエダンサーとして海外でも活躍していたAさん

現在は日本でバレエの先生をしながら、ご自身でも現役で踊られています。

1年ほど前に出産をしていて

今では

 

お母さん

先生

バレエダンサー

 

の3役を同時にこなしていて

どこにも手を抜かないとってもすごい方です。

個人的には

家でも教室でも、ご自身のレッスンも頑張っていて

たまには休んでほしいと思ってしまいます。。。

 

そんな頑張り屋さんのAさん

 

出産後復帰をしてから、股関節の痛みが出るようになったとのことでした。

 

痛みは1か月前から膝伸展位で股関節を外転すると、鼠径部に痛みが出るようで

痛む場所は鼠径部と内転筋起始部のあたりでした。

評価

まず痛みの場所を確認

痛みの場所は鼠径部で大腿骨頭の前面で圧痛もありました。

他動的に股関節を外転すると内転筋起始部に痛みがあり

股関節を屈曲すると鼠径部につまり感があるようでした。

姿勢を見ると立位で身体を横から見たときに骨盤がやや前方にでていました。

さらに骨盤の動きも悪く、伏臥位で仙骨底を押すと仙腸関節に痛みもありました。

 

痛みの場所を見ると腸腰筋腱と内転筋付着部に炎症があるようで、

骨盤の動きも取り戻す必要があると考えました。

↓〇部分が痛みの部位

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用

治療について

Aさんの立位姿勢を横から見たときに

スウェイバック姿勢のように骨盤がやや前方にありました。

マッスルインバランス改善の為の機能的運動療法ガイドブックより引用

 

おそらく、出産の影響で腹部の筋力が低下したことと、

お子さんを抱っこするときに、身体を反らせて骨盤に乗せるように抱っこするようで

それらの影響で出産以前と違った姿勢になっているようでした。

 

いろいろお話を聞いていると

本当にお母さんは大変。。。

聞けば聞くほど、世のお母さんを尊敬する気持ちが溢れます。。。。

私ができることは、そんなお母さんたちの身体を少しでも楽にしてあげること!

頑張ります!
 

 

と話が反れました。笑

話を戻します。 

 

スウェイバックのように骨盤が前方に変位すると

骨盤は後傾

股関節は相対的に伸展位になります。

 

この姿勢では、長内転筋やハムストリングス、外旋六筋の硬さが強くなり大殿筋の反応は低下する方が多いんです。

骨盤後傾位で外旋六筋の硬さが強くなると

大腿骨頭の前方を通る腸腰筋腱にストレスが強くなります。

これが今回腸腰筋腱の炎症に繋がったんだと考えました。

 

また、この姿勢では長内転筋の硬さが強くなり、仙腸関節や骨盤全体の動きも悪くなります。

骨盤が動けないことで股関節周囲の筋にはストレスが大きくなるので、

骨盤の動きの悪さは鼠径部痛の原因となります。

 

痛みのある場所は、鼠径部で腸腰筋腱と内転筋起始部

しかし

いきなり、患部にアプローチしても大きく変化はしないだろうと考えられるので

まずは

骨盤を後傾させる筋からアプローチします。

 

ハムストリングス

外旋六筋

ですね。

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用

 

その後、内転筋を両側にアプローチします。

患側へのアプローチだけでも痛みは改善しましたが

反対側の内転筋にアプローチをすることで内転筋の痛みはなくなりました。

このように内転筋は患側だけでなく、反対側との繋がりも強いので

患側だけでなく反対側も治療します。

 

さらに股関節の外転制限で忘れられがちなのが

 

大腿方形筋

作用は股関節の外旋と内転

 

股関節の外転制限でたまに見られ、

腰痛や臀部痛を訴える方もここが硬くなり股関節の制限となっている方を見かけるので

注意深く見てみてください。

 

ここまで治療すると骨盤の動きはかなり出てきて

 

腸腰筋の痛みの原因と思われる

骨盤後傾、外旋六筋の硬さも落ち着いたところで

痛みの強い腱の部分を避けて腸腰筋にアプローチ。

 

すると股関節を外転しても屈曲しても痛みやつまり感はなくなりました。

 

めでたしめでたし。。。

 

ではなくて

もう一つ気になることがあります。

 

それは股関節屈筋の筋力低下の疑いです。

Aさんのように骨盤が前方にある姿勢の方は股関節屈曲の筋力が弱い傾向にあると私は思っています。

そこで、股関節屈曲筋の筋力を確認してみると

患側でかなり弱い状態でした。

えっ、こんなに力はいらないんですね。。。

と本人も驚いている様子。

こういった筋バランスの悪さも痛みや姿勢の悪さの原因となるので

お薬代わりに

股関節屈曲のトレーニングや、その他ストレッチをお伝えしました。

 

痛みは改善しましたが

まだ、炎症は残りますし何より

普段の生活で負担がかかります。

まずは炎症を引かせるとこが大事ともお伝えしました。

 

頑張り屋さんのAさん、たまには身体を休めることも大事だと思いますよ(^^)

 

今回は以上です。

体の状態は様々で、よくアライメントを見てその人にあったアプローチをしましょう!

今回はあくまで治療の一例で、治療の気づきになれれば幸いです。

この記事が若手治療家・トレーナーの役に立ちますように。

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