先日、こんなご相談がありました。
前腕から手の小指側が痺れると言う患者様がいて
評価をして
斜角筋で腕神経が絞扼された
胸郭出口症候群を疑い治療をしていたんです。
斜角筋の緊張が強くて、この緊張を緩めよう!!って思ったのですが
その斜角筋が全然緩まなかったんです。
斜角筋ってどうやって緩めたらいいんですか?😭
とのことでした。
斜角筋って、なかなか緩まないことが多いんですよね💦
私も昔すごく悩んだ記憶があります!
この痺れは斜角筋から来てるんじゃないか?
ほら、斜角筋がすごく緊張している!
よし!
斜角筋を緩めよう!
と斜角筋にアプローチしても
えっ、全然緩まない。。。
これ、結構悩みました。
そんな悩みの解決のきっかけになればと思い、今回は斜角筋を緩めるためのアプローチのお話をします!
患者様の状態により、アプローチ法はさまざまですが
今回はその中から3つご紹介していきますね!
斜角筋について
アプローチのお話をする前に
まず、斜角筋の起始停止、作用についておさらいします👍
起始停止
斜角筋は
前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋とあり、それぞれ付着部が異なります。
前斜角筋
起始 C3~6前結節
停止 第一肋骨の前斜角筋結節
中斜角筋
起始 C2~7後結節
停止 第一肋骨の上縁
後斜角筋
起始 C4~6後結節
停止 第二肋骨外面
作用
頭部の側屈、回旋、屈曲
呼吸の補助
神経支配
前斜角筋;C5~C6
中斜角筋;C3~C8
斜角筋;C6~C8
最小斜角筋;C7
斜角筋へのアプローチ3選
アナトミートレイン
斜角筋へのアプローチで意外と見落としがちなものが筋膜の繋がりからのアプローチです。
筋膜、骨膜など
体は様々な膜で覆われており、それは一つ一つ独立して存在しているのでなく、膜同士繋がり持って、ユニットとして存在しています。
なので、一つの膜が緊張するとその膜につながりを持つ他の膜にも緊張が波及します。
体をシーツに置き換えるとわかりやすいです。
シーツの一部を引っ張ると
その力は引っ張った一部だけでなく、シーツ全体に影響します。
それは体も同じです。
体も全身を膜で覆われているため
一部分の緊張が全身に影響するんです。
詳しくはこちらアナトミートレインを読んでいただけるとより理解しやすいと思います。
では、その膜を考えた時に
斜角筋に影響するものとして多く見られるのが
ディープフロントライン
体の深層を通る筋膜のラインです。
その中でも斜角筋に影響が多いなと思うのは、腸腰筋になりす。
胸郭出口症候群で頸肩部や腕の症状の治療をするのに、腹部へのアプローチが必要になるケースもあるんですね!
さらに
腸腰筋は後脛骨筋と繋がりが深いため
場合によっては後脛骨筋へアプローチをすることで腸腰筋の緊張を落とします。
腸腰筋の緊張が緩むだけで
斜角筋に手を入れずとも緩んでいることもあるため
緩まない斜角筋に出会ったら
腸腰筋の緊張は必ず確認する場所なんです!
胸郭の可動性
斜角筋へのアプローチ
2つ目は胸郭の可動性です。
斜角筋の付着部を見ると上位肋骨に停止します。
胸郭の動きが制限されると斜角筋にも影響するんです。
胸郭の制限因子は
いくつもあります。
胸鎖関節の動きの制限
腰部の硬さ
横隔膜の反応低下(横隔膜と呼吸補助筋のバランスの崩れ)
etc
胸鎖関節の動きの制限について
例えば三角筋前部繊維の緊張により肩甲骨、鎖骨の動きが制限されると胸鎖関節の動きも制限されます。
そうなると上位胸郭にも動きの制限が現れ斜角筋が緊張するんです。
胸鎖関節の動きが制限されている場合
斜角筋の付着部である胸郭の可動性を取り戻すために胸鎖関節へのアプローチが必要になります。
大胸筋上部繊維についてはこちら
腰部の硬さについて
例えば、腰方形筋や腸腰筋など下位胸郭に影響する筋の硬さある場合
それは胸郭全体の動きの制限になるため
胸郭の可動性を取り戻すためには腰部へのアプローチが必要になります。
腰部の硬さがある場合、腰部から胸郭の制限を解くことで斜角筋にの緊張が緩みやすくなります。
横隔膜の反応低下(横隔膜と呼吸補助筋のバランスの崩れ)
安静時呼吸は本来、主に横隔膜にて行われています。
しかし、緊張やストレスなどの影響で横隔膜の収縮が低下して
本来補助の役割をする
呼吸補助筋
胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋、大胸筋、小胸筋等が過剰に収縮しているケースがあります。
そういった方は呼吸は浅く、お腹の動きが小さくなっています。
斜角筋については、緊張が強くなっており、直接アプローチしても緩まないことが多いです。
そんな時は、ドローインをして
横隔膜の反応を取り戻すことで
斜角筋など呼吸補助筋の緊張を落とすことができます。
呼吸についてはこちら↓の記事でも書いています
胸郭については、一つで語れませんが
緩まない斜角筋に出会った時
胸郭の制限があったのなら
斜角筋より、まず胸郭へのアプローチをしましょう。
上肢腕神経絞扼
最後に腕神経絞扼についてです。
腕神経は前斜角筋と中斜角筋の間から出て上肢に向かい走行します。
尺骨神経、橈骨神経、正中神経が上肢で絞扼されていると
斜角筋にまで影響が出て緊張が強くなります。
実際に緊張の強かった斜角筋が
尺側手根屈筋や三頭筋での尺骨神経絞扼
や
回外筋での橈骨神経絞扼
など上肢での神経絞扼を解くことで
直接斜角筋にアプローチしなくても緩んでしまうケースに多く遭遇します。
まとめ
今回はなかなか緩まない斜角筋へのアプローチについて3つご紹介しました。
1つ目はアナトミートレイン
斜角筋と筋膜の繋がりを持った
腸腰筋や後脛骨筋などディープフロントラインからのアプローチをすることで、斜角筋が緩むケースがあります。
2つ目は斜角筋の付着部である
胸郭の制限を解くための部位の一例について
付着部である胸郭の制限がなくなることで、斜角筋が緩むケースがあります。
そして3つ目は
腕神経絞扼を解く
上肢での腕神経絞扼があっても斜角筋は緊張します。
その上肢での神経絞扼が解かれることで斜角筋の緊張が緩むことも多々経験します。
今回は以上の3つご紹介しました。
斜角筋って、直接アプローチしても緩まないことが多いので
若手の治療家から相談されることが多い部位です。
今回ご紹介したように
斜角筋の緊張に影響を与える部位
に目を向けてアプローチすると緩みやすくなりますね!
木を見て森を見ず
体は全体で繋がりを持って動いています。
患部だけでなく広い視野を持って治療をしたいですね!
今回は以上です。
参考になれば幸いです!
この記事が若手治療家やトレーナー、その先の患者様の役に立ちますように。
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