評価は治療家の成長のために重要
先日の記事で、手関節の治療について書きました。
それから手関節の治療をしていて、自分が見ている評価をもう少し深掘っても面白いかもなーって思いました。
若手の頃は硬い筋肉を緩めて、次にまた硬い場所を緩めて
全体的に気になる硬さを緩めて
さぁ患者様、症状の変化はどうですか?
ってなっている方が多いと思います。
初めは硬かった筋肉が緩んだことで
嬉しくて、楽しくなりますが
硬かった筋肉が緩んだことで、他に何が変わったのかを確認しないと
患者様の主訴は何が原因で
自分のアプローチの何が良かったのかがわからないまま治療が終わってしまいます。
これってすごく「もったいない」んですね。
そういった治療を繰り返していても、良い経験が積めるとは考えにくいです。
治療家は経験がとにかく大事です!
評価→仮説→アプローチ→再評価
の流れを繰り返し
一つ一つのアプローチでどんな変化が現れたのを確認するとより良い治療、より良い経験になると思います。
ということで
今回は手関節の評価の中でも
橈尺屈の動きについて書いていきます。
手関節橈尺屈
私が手関節の治療をする中で見るポイントの一つに
手関節の橈尺屈があります。
手関節の橈屈、尺屈それぞれの動きを詳しく見てみると
手関節橈屈では、手根骨が前腕に対して尺側にスライドしながら、手部は橈側に動きます。
手関節尺屈では、手根骨が前腕に対して橈側にスライドしながら、手部は尺側に動きます。
この動きに制限が出ることで、
手をついた時や手を捻ったときに痛みや違和感など症状が出ます。
ですので、橈尺屈の動きが制限なく動かせることは、手関節の治療では重要になります。
実際にやってみよう
では、どうやって動きの確認をするのか
実際にパートナー(もしくは患者様)の手首を見てみましょう。
まずパートナーの手背を上に向けて、手根骨を両手の母指と示指で把握します。
その時、母指は背側で示指は掌側から手根骨の橈側、尺側を把握します。
初めは細かい触診はせずに(特定の◯◯骨を触れるではなく)手根骨を触れながら、手関節を橈屈、尺屈させます。
このとき、滑りと転がりを意識して動かすことが大事です。
凹凸の法則では
前腕骨(橈骨尺骨)側が凹
手根骨が凸として動きます。
この動きの中で健側と患側で動きの違いを感じましょう。
橈屈した時に尺側に制限を感じたり
逆に尺屈した時に橈側に制限を感じると思います。
初めはわかりにくいと思うので、とにかく何回もたくさんの人でやってみてください。
だんだんわかってくると思います!
制限を感じてからもっと細かく評価するため、手根骨それぞれの触診をすることもありますが、今回は割愛します。
こういった橈尺屈の動きの制限が、着手したときや回内外した時の手首の痛みに繋がることがあります。
凹凸の法則については
手首を捻ると手関節尺側が痛い-TFCC損傷?-に書いてありますので、ご覧ください!
患者様の例
実際の患者様の例では
手を床についた時に(手関節背屈)手首の尺側に痛みが出るAさん
橈尺屈の動きを確認すると
橈屈した時に尺側に制限を感じました。
この橈屈の制限を解除することで、手をついた時の痛みは無くなりました。
この患者様では尺側手根屈筋の硬さが強く手関節橈屈の制限となり
着手した時に橈屈側に力を逃すことができず尺側に圧が強くなるために痛みが出ていたのだと考えます。
同じく手をついたときに尺側が痛いBさん
橈尺屈の動きでは尺屈に制限を感じました。
この時も尺屈の制限となる手関節橈側の制限を解くことで手関節尺側の痛みはなくなりました。
この時は橈側手根屈筋や母指外転筋が手関節尺屈の制限となり
着手した時、通常であれば橈側にも尺側にも手根骨がスライドできることで圧を分散できるのが
手根骨が橈側にスライドすることができず手根骨が尺骨側に近づき圧を高めてしまっていたと考えました。
手関節を回内させた時に手首の尺側に痛みが出るCさん
橈尺屈では橈屈制限がありました。
肘関節からアプローチしましたが尺側手根伸筋の硬さがあり、橈尺屈曲の制限が出ていました。
この患者様では、尺側手根伸筋腱に痛みが出ていたと考えられ
橈尺関節の動きの改善と尺側手根伸筋を緩めることで
橈尺屈の動きが改善し
痛みも無くなりました。
手関節橈尺屈の動きの制限が手関節の痛みに繋がる。
このように手関節橈尺屈の制限があるだけで様々な手関節の痛みに繋がります。
橈尺屈の動きの制限が直接痛みに直結しているケースばかりではないですが
手関節の評価の一つとしては、とても重要だと考えております。
手関節は、手根骨や手内筋など骨や筋が細かく、肩や肘の影響も強く出て複雑な部位ですが
こういった評価を一つ一つ丁寧にして行くことで、原因となる制限が見えてきます。
硬い筋肉を見つけて、ただ緩めるのではなく
筋の硬さと動きの制限をみつけて
評価→仮説→アプローチ→再評価
の流れを毎回意識して治療することで治療家としてのスキルアップに繋がります。
評価で制限を感じることは、初めはとても難しいと思いますが
とにかく数を繰り返すうちに少しずつわかるようになります。
諦めずに、何度でも練習して
評価の感度を高めていきましょう!
最後にいつも述べていますが、私たちは全ての症状を治せるわけではないので 強い炎症や診察を勧めるべき症状はしっかり見極めて、患者様の最良の選択を提案できるようにしましょう!
今回は以上です!
この記事が若手治療家やトレーナー、その先の患者様の役に立ちますように。
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